ゆっくり人生

不登校や引きこもりを経験しながら、現在は研究者の登竜門的存在である日本学術振興会 特別研究員(DC1)を務める大学院生のブログ

【博士課程】博士課程学生への経済的支援が脆弱な件

 

博士課程在籍中のユモクです。

最近、Twitterでこんな呟きを見つけました。

 

補足をしておくと、このツイートを見つけられた理由は下のTweetが「Yahoo!」の人気Tweet一覧で取り上げられていたからです。

 

この画像の元々のデータの出典がわかりませんでした(文部科学省の何年度の調査か調べても出てこなかった)。

 

代わりに、文部科学省 高等教育局大学振興課と株式会社インテージリサーチによる『平成28年度「先導的大学改革推進託事業」 博士課程学生の経済的支援状況に係る調査研究 報告書』(調査実施は平成27年度)を参考に、本記事では日本の博士課程学生の経済的支援状況について考えていきたいと思います。

参考:

https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/itaku/__icsFiles/afieldfile/2018/03/12/1402017.pdf

多分、画像の元データはこの調査研究の最新版に位置付けられるものでしょう。

 

 

博士課程学生で経済的支援の受給額が年180万円を超えるのは10%程度

上のtweetの画像でも平成27年度調査でも、貸与型奨学金を除いて経済的支援を受けており、その額が年間180万円を超えているのはおよそ10%です

その詳細を平成27年度段階で見てみますと180万円以上240万円未満が2.8%、240万円以上が7.6%計10.4%

 

f:id:yuMoKu:20210613220346p:plain

出典:文部科学省 高等教育局大学振興課・株式会社インテージリサーチ(H29.3)『平成28年度「先導的大学改革推進委託事業」 博士課程学生の経済的支援状況に係る調査研究 報告書』 (p. 37)

 

「年間180万円」はこの調査で「生活費相当額」の基準として扱われています。

しかし年収180万円って月収換算だと15万円、かつ扶養に入れないラインのため税金であったり保険料がかかったりするので、一人暮らしだったら相当厳しい生活を強いられると思うのですが…

 

ちなみに博士課程1年生である僕の今年度年収は250-260万円くらいの見込み。

内訳は「日本学術振興会 特別研究員(DC1)」としての給与で240万円、研究補助等のバイトが入るのでそれで10-20万円見込んでいます。

おそらく、博士課程学生で年収240万円以上となっている人の多くは、僕と同じDC、もしくはそれに準じる事業(各大学で、DC相当の経済的支援を受けられるプログラムを用意していることがあります)に採用されている人です。

 

yumoku-slowlife.com

 

「DC相当」という書き方をしているように、年240万円あたりが一つの事業から受けられる経済的支援の上限と言えるでしょう。

「複数の事業に採用される」ということも可能ですが、複数採用を禁じる規定を設ける事業もあるため、頑張ってもDCと別の事業一つで年収300万円くらいが博士課程学生の年収の上限と見て良いかもしれません。それにたどり着けるのは本当に一握りですが。

 

それ以上に注目しなければならないのは、受給総額が0円という人が52.2%(平成27年度)と半数以上が受給なしということ

ただこのデータだけでは「一般的な学生」については語れない、すなわち働きながら学生をしている社会人学生なども含まれているデータだと経済的な状況を測りきれません。

同調査の別データを活用し、「一般的な学生」の経済的な状況を詳しく見ていきたいと思います。

 

 

「一般的な学生(課程学生)」のみを見ていくと実は少しだけマシ

同調査では、博士課程の学生を課程学生、社会人学生(社会人経験のある学生)、外国人学生などに大別しているデータもあります。

この中で「一般的な学生」=学部、修士からそのまま進学してくる学生が含まれているのは「課程学生」なので、課程学生に注目して見てみましょう。

 

f:id:yuMoKu:20210613221114p:plain

出典:文部科学省 高等教育局大学振興課・株式会社インテージリサーチ(H29.3)『平成28年度「先導的大学改革推進委託事業」 博士課程学生の経済的支援状況に係る調査研究 報告書』 (p. 38)

課程学生だと180万円以上240万円未満が3.0%、240万円以上が16.3%およそ20%が生活費相当額を得ています

一方、「支援なし」(0円)が27.3%です。

 

博士課程全体だと180万円以上の経済的支援を受けているのが約10%、0円が50%超であったので、「一般的な学生」の経済的な状況は、最初に出したデータから見えるよりはまだマシと言えるでしょう

 

ただし、「まだマシ」なだけであって生活費相当額の経済的支援を受けられていない学生は約80%もいます。

その補填のためには、親の仕送りに頼ったり、バイトをしたり、返済の必要のある奨学金を借りたりする必要があります。

そしてバイトの時間が長くなると研究に割ける時間が減る、返済の必要のある奨学金=借金というデメリットがあります。

そうなると「親の仕送りに頼る」ことになりますが、そうなると裕福な家庭出身研究者の割合が必然的に上がることになります。

構造的に偏った社会背景を持つ者が集まる可能性を秘めているとも言えますね

 

 

研究の世界ではなく外の世界に目を向けると劣悪さが際立つ

ここまで博士課程学生内の経済状況について見てきましたが、視野を広げ「20代の若者の給与」として、国税庁のデータを活用して考えてみましょう。

 

参考:

給与実態統計調査 年度別リンク|国税庁

 

このデータは毎年度まとめられていますが、これまで使ってきた文科省のデータとの対照性を考えて、あえて平成27年度の調査結果を見てみます。

 

f:id:yuMoKu:20210613221403p:plain

出典:国税庁 長官官房 企画課(H28.9)『平成27年分 民間給与実態統計調査 -調査結果報告-』(p. 18)

 

課程博士にストレートで入学すると25-27歳なので、25-29歳の平均年収を確認しますと、352万円(男性 383万円、女性 306万円)となります。

「学歴の最高到達地点で博士課程の学生で年間180万円以上の経済的支援を受けられているのが約2割しかいない」とか言っている横でこれですよ。

博士課程学生の中ではお金を持っている人でも、同年代と比較すると収入という意味では下位ランクになります。

博士課程学生が「優秀な若手研究者」として認められ、「日本学術振興会 特別研究員」などを勝ち取り収入を確保したところで、現実では低所得者です。

 

「研究職って、教授や准教授になれば給料高いんでしょ?」と言われるかもしれません。

ただ僕個人の意見では、年間180万円以上の経済的支援を受けられる(=厳しい選考を勝ち抜いて経済的支援を獲得している)ような優秀な人の大半は、社会に出て会社で出世したり、起業したりした方が、生涯賃金を高くできると思います。少なくとも僕のいる分野に関しては。

博士課程に進学するには、単純に「研究が好き」など経済的なところではないモチベーションがないと厳しいかもしれません。

 

yumoku-slowlife.com

 

 

「博士課程」は学生でありつつ研究者でもある

「博士課程は『学生』なのだから、その立場でお金を得ようなんて考える必要がない」と思う人もいると思います。

 

しかし、博士課程の期間を「職業研修」として位置付けると、多少の経済的支援が発生しても良いのかもしれません。防衛大学校の学生とか給与もらえるし。

個人的には、そもそも日本には「お金をかけて人材を育てる」という意識が足りないと思っています。

数週間、数ヶ月の研修ではなく年単位で人材を育てる意識があっても良いんじゃないかな、と。

 

そして博士課程の学生は研究成果を挙げないと博士号がもらえない立場です。

つまり、立派な研究者という面も持っています。ただ教えを乞うだけの立場ではありません。

そう考えると、多少なりとも経済的支援受けられても良いのではないかとも思えてきます。 

 

少なくとも、「個々人の経済状況に関係なく、優秀な人が進学しやすい仕組み」は確立していくべきでしょう

 

 

おしまい 

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

この記事を執筆したユモクについては以下の記事でまとめています。

興味があれば読んでもらえるととても嬉しいです。 

yumoku-slowlife.com

 

そしてTwitterやってます。運用方法模索中…