ゆっくり人生

不登校や引きこもりを経験しながら、現在は研究者の登竜門的存在である日本学術振興会 特別研究員(DC1)を務める大学院生のブログ

29歳でやっとまともな給料をいただけるようになり、思うこと(感謝・学振の制度について)

 

どうも、ユモクです。

 

先週、5月20日は令和3年度採用の日本学術振興会 特別研究員にとって、初めて給与(研究奨励金)が振り込まれる日でした。

採用初年度は4月に振り込みはなく、その代わり5月に2ヶ月分振り込まれるということで、DC1の僕は20万円×2(厳密には所得税が引かれた額)が振り込まれていました。

 

バイト経験はありますが、僕にとって今回の給与が29歳にして初めてのまともな給与でした。

そのため、個人的には非常に嬉しい日になりましたね。本当に良かった…

しかし、自分のことと切り離し、優秀な若手研究者を支援する「日本学術振興会 特別研究員」の制度として考えると、いろいろと思うところがあるのも事実。

 

そこでこの記事では、「僕個人として思うこと」と「若手研究者を支援する制度としての給与」として捉えたときの複雑な思いを書いていきたいと思います。

 

 

 

 

僕個人として思うこと

①周囲の人たちへの感謝

僕を認めてくださった日本学術振興会は当然として、僕のここまでの研究生活を支えてくださった指導教員、目をかけてくださった他コースの先生方、先輩方、既に卒業・修了してしまったけどたくさんの刺激をくれた同期、後輩のみんな、遡れば不登校・引きこもりの時に支えてくださった方々、そして何より家族に深く感謝いたします。

特に両親が非常に喜んでくれているのが嬉しいです。金銭的な自立までとても時間かかったからなぁ…

人一倍他人にお世話になる人生を送ってきました。

定職に就いた訳ではないのでまだまだお世話になることもあるかと思いますが、人生の中で一つの区切りを迎えられたと思います。

これからもよろしくお願いします!

ただ母よ、収入を得られるようになったからって結婚は急かさないでくれ。

急がずいい人見つけたいのよ…

 

②同い年や大学の同期を見てると、「やっとここまでこれた…」という安堵

世間一般的には「29歳で初めてのまともな収入」というのはめちゃくちゃ遅いです。

僕は地元を捨ててきた(蒸発するようにいなくなった)こともあり、同い年の友人はほぼいないため、同い年の人たちが社会に出てお金を稼ぐ姿を見て焦るということはありませんでした。

しかし、さすがに3-4歳下の大学の同期が学部卒で働き始めている姿を見ると、ここ2年間は自分だけ取り残されているような気を持つようになりました。

そのため、まだ学生ではありますが、お金を得られるようになったことで安堵できました。

 

ただし、研究の道を進む人間と考えると、29歳でまともな収入を得るのはそんなに遅くないということにも触れなければなりません。

飛び級などの特殊な例を除けば博士号を取得できるのは最速27歳。

まず博士課程を3年で修了することが難しい。

そして博士課程まではまともな収入を得られないという人の方が圧倒的多数ですし、博士号を取得してもすぐに定職につけるという人もまた稀です(特に文系では)。

研究者の道では、「30歳になってもまともな収入がない」ということは起こり得ます。

そういう意味では僕は恵まれている方なのかもしれません。

  

 

③使い道は何にしようか

大方生活費に消えてしまう額ですが、初任給ということで記念に何か買いたいという気持ちもあります。新型iPad Proとか、少しだけ高めの時計とか。

ただ、やはりまずは恩返しでしょうね。それでどれくらいお金がなくなるかを見てから自分のために何か買おうと思います。

祖父母にも何か贈り物をしようと画策中…

両親には今度会ったときにご飯を奢ろうと思います。

そして先輩後輩たちとは、コロナの影響でやれていない学振焼肉を開催しなければ…

社会人になった同期にも「焼肉焼肉!」と近づいてこられてますが、え、お祝いでそっちが奢ってくれるんでしょ?

 

 

優秀な若手研究者を支援する制度として思うこと

①「ちゃんと採用されていた」との区切りになった

給与をの振り込みを見て一番に思ったのが、「お、ちゃんと日本学術振興会 特別研究員として採用手続き完了してるんだ」ということ。

実は、「採用が完了した」という旨の正式な通知は学振側から採用者一人一人にはないんですよ。

HPの今年度採用者一覧に名前があるのを見て「採用されてるんだよね…?」と文字通り半信半疑になり、科研費の内定が大学経由で来て「あ、多分採用されてる」と8割くらい信じることができ、給与の振り込みで確信できました。

自分は心配性なので、DC持ってる先輩に「採用通知ってあるんですか…?」とかいろいろ聞きましたからね…

日本学術振興会側は手続きの際に「採用手続きに不備があれば採用されない」という旨の不穏なことは注記しつつ、採用手続きの完了通知がないのは、内定状態だった人間としてはかなり心細いものがありました。

このせいで国民健康保険への加入手続きも遅れているので、ここら辺何とかしてもらいたいというのが本音。

 ※追記:5月下旬になってやっと正式な採用通知が来ました

 

②「一律20万円」という額の不安定さ

DC採用の場合、もらえる給与は一律20万円です。

「家族と同居している人」も「一人暮らししている人」も同じ額です。

それは会社勤めの場合も同じですが、会社員の場合、例えば家賃補助などの制度がある事が多いと思います。

このおかげで、僅かばかりかもしれませんが親の持ち家に住んでいる場合と一人暮らしの場合でかかる費用の格差是正制度があると思います。

学振、そういった制度一切ありません。

 

また、日本全国どこに住んでても同じ給与になります。

家賃の低い田舎でも、高い都会でも。

 

最低賃金が都道府県によって違うことからも現れているように、住む場所によって生活コストは大きく違いますが、学振の給与ではそういったことは関係なし。

 

何なら「給与は支払われているけど、日本学術振興会と特別研究員の間で雇用関係はない」という建前のため、保険も国民健康保険に加入しなければなりません。

国民健康保険、2年目以降の保険料が結構高いんですよ。満額で払おうとすると年間20万円近くになることもあります。つまり、一月分の給料が持っていかれます。

20万円という額だけ見ると最初は大きいと感じましたし、親と同居してればかなり余裕のあるものだと思いますが、都会で一人暮らしだと厳しいになる可能性があります。

貰えるだけマシなのですが、意外とお金持っていないから奢れないよということは後輩には伝えたい(切実)

 

 

③日本の科学発展を担う若手研究者への金額としては少なくないか…?

上記までと繋がりますが、月間20万円、そこから保険料や年金やら市民税やらが引かれると意外と残らないのがDCの給与です。

「DCに採用される人の方が少ないんだから贅沢言うな!」という声もあると思いますが、それは博士課程の学生内の話で、他の職業に就く20代の人たちと比較すると決して良い待遇ではありません。

 

研究者に対して「研究しかできない、つまり他のことはできない人」みたいな偏見を持っている人もいますし、実際そういう人もいます。

しかし、「日本学術振興会 特別研究員」に採用される人を見渡すと、「何やらせても優秀」という人の方が圧倒的に多いです。

つまり、研究以外の道に進んだ方が生涯賃金が高くなりそうな人ばかりなんですよ。

その中で既述のように諸々の補助もなく、保険料も高く、ボーナスもない月額20万円だと、「日本学術振興会 特別研究員」という立場には金銭的魅力がないんですよね。

「好きなことで生きていけるなら給料関係ない」という考えもあるでしょうけど、優秀な人材を研究の世界に繋ぎ止める制度になっていないと言わざるを得ないです。

実際、僕の周りにはDCの採用(内定)はもらったけど、それを蹴って社会に出た先輩方が複数います。謙遜なしで僕なんかより優秀な人たちでした。

そういう優秀な人が流出するのは研究界にとっては大きな損失だと思いますが、個人の生活を考えたらその道の方を選択する方が賢いと僕も思います。

日本の科学を発展させたいなら、博士課程学生への支援をさらに拡充すべき(対象者を増やす・一人当たりを増額する)ではないでしょうか。

 

 

最後に:個人的には感謝してるよ!でも…

ここまで研究を進めてきてそれが認められ、給与をもらえるようになったことは非常に感謝しています。

ただし、日本の科学力向上を考えると、「日本学術振興会 特別研究員」は優秀な人材を十分に確保する制度にはなっていないと思うのが正直な感想です。

今年度より文部科学省が「科学技術イノベーション創出に向けた大学フェローシップ創設事業」などを始め、多くの博士課程学生への経済支援を進めるなどいい方向に向かっていると思います。

ただ、「お金を稼ぎたい」という人を繋ぎ止めるシステムにはなっていないな、と。

日本学術振興会 特別研究員の場合、副業制限規定もあるので、月額給与20万円からの大きな増額は個人活動では見込めないですし(これは特別研究員には「研究専念義務」があるのでいたしかたないのですが…)

正直、僕自身も他の道があればそっちに行きたいという気もあります。

博士課程学生への経済的支援の現状は、「博士課程まで行くのだから研究が好き」という、やりがい搾取に似た前提に依存した制度にも感じます。

 

おしまい!

 

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